モルトの会、テイスティングノート
2013.10.27 スタンドバーにて
今月のお題は、「イチローズモルト」である。
個人名を冠した、小さな小さなジャパニーズモルト、今回で二回目の登場である。メジャーメーカーのモルトでは無いだけに、読者の方々もたいへん興味を持たれているモルトではないだろうか。
樹液を感じる特異な含み香のモルトが数本あり、スコットランド産でこの香りのするモルトの記憶が無く、ジャパニーズモルトと当たりをつけた。また、香りや味わいはバラエティに富んでおりメジャーメーカーのモルトだと感じた。
そんなことでニッカあたりの新しいタイプのモルトと想像したが、正解はイチローズモルトとのこと。
今回3年熟成のモルトが2本含まれていたのだが、テイスティングメモには若いという単語は見当たらない。驚くべき熟成の早さにはメンバーも舌を巻いていた。
前回の羽生ブランドでの5本から5年、確実にレベルの上がったモルトを出してきているイチローズモルトに拍手である。
さて、そんなモルト5本を紹介しよう。
*** [No.1] オフィシャルボトル THE PEATED 秩父 2009-2012 1943/5000 50.5% ***
(香り) 香りが弱い、わずかなブドウの香りとピート香。しだいにフルーツ香は酸味とともにその強さを増してくる。
(味) ピートが強く口の中に広がる、かなりシャープなピートだ。味の数は多くなくドライである。樽由来の渋味が心地よい。
*** [No.2] オフィシャルボトル 羽生 ホッグスヘッド cask no.479 25/200 1991 21年 56.3% ***
(香り) 上質なエステル香が立つ。しばらくグラスを回していると香りは強くなるが、セメダインを思わせる香りがやや鼻につく。奥には軽いピート香。
さらに時間を置けば、甘い香りやバニラ香が立ってくる。
(味) 熟成由来の渋味を感じる。わずかなピートが心地よい。ウッディとは呼べない木香を感じるが概ね長熟と言っても良い。
*** [No.3] オフィシャルボトル 羽生 ジャパニーズオーク cask no.369 1/183 1991-2009 18年 57.3% ***
(香り) 上質なエステル香と甘い香り。様々なフルーツが感じられるが、メインはブドウだ。時間とともにまったりとバニラが香る。
(味) 味わいもやはりエステリー、わずかなピートがアクセントとなっている。渋味や旨みが印象的だ。香りの数は少なくない。
*** [No.4] オフィシャルボトル 羽生 アメリカンオーク パンチョン 116/446 2000-2012 60.1% ***
(香り) ひねた香りがまず立つが、しだいにバニラ香に消される。その後エステリーな香りが開き、フルーツが何種も感じられるようになる、メインはブドウだ。酸味が心地よい。
(味) フルーティな味わい、ブドウがメインで甘さが強い。木の香りが心地よく樹液を思わせる含み香。長熟を予感させる。
*** [No.5] オフィシャルボトル 秩父 ザ・オリジナルクォーターカスク cask no.291 2009-2012 3年 61% ***
(香り) 香りが弱い。砂糖水を思わせる香りだが、酸味があり救われている。ややアルコール感が強い。ワイン風味、ブドウの香りが強い。
(味) 変わった味わい、木の含み香が特殊である。樹液あるいは、木の皮を思わせる味わい。